研究概要 |
外傷性脊髄変性を防止する目的で、外傷後の二次的障害機序による脊髄障害の進行に関する研究を行った。この二次的障害機序は酸化ストレスを中心に研究されてきた。我々も過去の研究で、活性化好中球の接着の阻害や、誘導型一酸化窒素合成酵素の阻害、レシチン化superoxide dismutaseの投与により、酸化ストレスを軽減し、脊髄機能の回復が促進されることを証明してきた。しかし、二次的障害機序は多岐にわたっており、これらに対する内的防御機構の存在を示すことは、今後の新たな方策を展開する上で意義深い。今回我々は熱ショック蛋白(Heat shock protein;HSP)に注目した。HSPが成熟した哺乳類の脊髄で発現することはまだ充分明らかでなく、今年度はまず全身熱刺激によるHSPの発現状況を検討した。その結果、HSPは全身熱刺激により脊髄内に発現することをWestern blot,Northern blotで確認した。さらに、これらの発現が神経細胞でなされていることを免疫組織学的に示した。これらの結果は、HSPの脊髄保護作用の可能性を示している。 また、実験的に示した活性化好中球の関与を、臨床的に脊髄損傷後の亜急性期に起こる機能増悪と白血球の関与を示した。さらに、一酸化窒素や酸化ストレスが関与しているとされているアポトーシスが人間の損傷後の脊髄にも受傷後2ヵ月にわたり発現していることを剖検例を用い、組織学的に証明した。 これらの結果は、脊髄損傷後の二次的障害機序の解明、阻害が、変性脊髄に対する神経移植、再生条件を検討する際に不可欠であることを示している。
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