1)臨床材料におけるPTHrPの免疫組織学的検索(油谷) 手術時に得られた膝関節軟骨(非炎症性疾患1例、慢性関節リウマチ5例、変形性関節症3例)の凍結切片を作成した。これにhuman PTHrPに対するモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行った。その結果、慢性関節リウマチ症例5例中4例、変形性関節症症例3例中1例に強い染色性を認めた。非炎症性疾患症例を対照とみなしたが、これにはPTHrPの局在を認めなかった。対照以外の症例はほとんど人工関節手術時に得られた標本であり、疾患の進行度としては晩期に属するものばかりである。したがって、今後様々な疾患進行時期の症例を集めてPTHrPの局在を検討する必要がある。 2)PTHrPの関節軟骨細胞に対する影響(invitro)(岩本) 4週齢の日本白色ウサギの肋骨肋軟骨移行部より成長板軟骨細胞を、そして膝関節より関節軟骨細胞をそれぞれ無菌的に酵素処理により単離した。酵素処理時間を同じにしたところ、関節軟骨細胞の収率が極端に低下したために、再度条件検討を行い適正なコラゲナーゼ処理時間を決定した。これは細胞外基質の量の差に原因があると思われた。その後の培養はDMEM/HamF12混合培地にて、成長板・関節軟骨細胞とも問題なく行えたので、コンフルエントで培養を続け、放射性同位元素を用いてDNA合成及びプロテオグリカン合成に対するPTHrPの影響を検討した。その結果、PTHrPは従来の報告にあった成長板軟骨細胞のプロテオグリカン合成を促進するのみならず、関節軟骨細胞のプロテオグリカン合成も著明に促進した。これまでの研究でPTHrPは胎生期の成長板軟骨細胞の増殖は促進するものの生後の成長板軟骨細胞の増殖は促進しないと報告されている。今回も同じ結果が得られたが、関節軟骨細胞に対してはPTHrPはわずかながら増殖促進活性を示した。今後は培養系を更に改良して、この違いを明らかにしたい。
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