研究概要 |
悪性高熱症モデルマウスを作って、悪性高熱症の病体整理を明らかにすることを当初の目的として実験を開始した。しかし、外国の悪性高熱症の家系での、リアノジン受容体遺伝子RYR1の検索によると、突然変異が起きている箇所が、非常に多数あり、しかも、突然変異の同定もあまり進んでいない状況であることがわかった。そこで我々は、まず東京大学医学部薬理学教室に保存されている、CICRが異常に亢進している日本人悪性高熱症患者三人の、RYR1遺伝子の突然変異検索を行うことにした。この三人の患者より採血を行い、白血球からgenomic DNAを抽出し、PCR法により、106個のエクソンよりなるRYR1遺伝子のcoding regionを増幅し、それをプラスミドベクターに組み込んだ。そのベクターをクローニングし、1エクソンにつき、5クローン以上をシークエンサーを用いて解析し、三人の患者のRYR1遺伝子の全塩基配列を決定した。 その結果、三人の患者ともRYR1遺伝子のC末部分の膜貫通領域(R4645Q,P4668S,L4838V)に、それぞれアミノ酸の変異を伴う突然変異を発見した。悪性高熱症の患者のRYR1遺伝子の全長をシークエンス解析したのは、我々のグループが世界で最初である。また、悪性高熱症で、RYR1遺伝子のC末部分に突然変異が見つかったのも世界で初めての報告となる。また、この方法を用いれば、患者に負担をかけることなく、術前に、悪性高熱症になる可能性があるかどうかを調べることができる。 現在、それぞれの変異を培養細胞に導入して、カフェインに対する細胞質のカルシウムイオン濃度の変化を見ているが、L4838Vの変異では、反応の亢進が見られた。よって、これらの変異が悪性高熱症の原因となっている可能性が高い。
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