研究概要 |
本研究の目的は、分子生物学手法によりクローニングしたGABA_A受容体をアフリカツメカエルの卵母細胞に発現させ、電気生理学的に全身麻酔薬(静脈及び揮発性麻酔薬)との相互作用を検討することである。本年度(平成8年)は、マウス脳からクローニングしたGABA_A受容体サブユニット(テキサス大学Yang博士から供与)のアフリカツメカエル卵母細胞発現系を確立すると共に、PCR法によりβ2サブユニットの第157位チロシンをフェニルアラニンに点変異したサブユニット(Amin,Nature 1993)を作成した。この点変異したβ2サブユニットをα1とγ2サブユニットとともに発現させ、全身麻酔薬との相互作用、すなはち、1、GABAアゴニスト作用と2、GABA増強作用について、2電極固定法によりC1-電流を測定することにより、以下の新しい知見を得た。1に関して、GABAと全身麻酔薬の用量反応曲線よりED50を算出した。GABAについては、非点位と点位は、各々、20.3と1845(μM)と有意に変化した。しかし、ペントバルビタール、エトミデ-ト、プロポフォールについては、各々、非点位と点位で、325と320、11,2と13,2、24、0と80、1(μM)であり、点変異の影響は、GABAに比して小さかった。2に関してED20の相当するGABAによるC1-電流に対する麻酔薬(ペントバルビタール、エトミデ-ト、プロポフォール)の増強作用は、点変異の影響は認められなかった。以上の結果により、GABAアゴニスト作用の関して、上記全身麻酔薬とGABAはGABA_A受容体での作用部位が異なること、また全身麻酔薬のアゴニスト作用と増強作用の作用部位が異なることが示唆された。これらの研究成果は、大学院生の深見が平成9年4月の日本麻酔学会総会での発表予定である。
|