研究概要 |
1.肺胞上皮細胞増殖因子前投与による肺障害抑制-申請者らの研究で、FGFファミリー特にケラチノサイト増殖因子(KGF)が肺胞II型上皮細胞を特異的に増殖させかつ肺表面活性物質アポ蛋白遺伝子SP-A.SP-BmRNAsの発現を著明に増加させることが証明された(Am J Physiol,1995)ことから、このKGFを2回投与(前投与および後投与)して、ブレオマイシン肺線維症および塩酸肺障害を軽減できないかラット肺で検索した。KGFをブレオマイシン投与2日前と投与24時間後と2回投与すれば、ブレオマイシン肺障害が抑制されることを、肺生理学的、組織学的検索で証明できた(J.Pathol,1998)。即ちKGF2回投与により呼吸不全動物の体重減少、肺湿重量増加、肺容量(Total Lung capacity)減少などが抑制でき、かつI型およびIII型コラーゲンの免疫組織学的増加、in situ hybridization法によるそのmRNAの過剰発現などが抑制され、正常肺に近い構築を示した。特に、塩酸肺障害(誤燕性肺炎)でも抑制効果が著明に見られた。しかし、後投与だけでは効果が少なかった。2.肺胞上皮細胞増殖因子(KGF)と人工サーファクタント併用による後投与による肺障害抑制効果-予備実験でKGFの後投与による肺障害抑制効果が少ないことが明らかであったので、人工サーファクタントとの併用効果を試み、障害抑制効果がみられたが、現在経時的に投与日を変え最大効果のある時期を検索中である。3.KGFによる肺障害抑制の機序解明-KGFによる転写因子(C/EBPα、β、γ、)、肝細胞増殖因子(HGF)、transforming growth factor(TGF)など細胞増殖および線維化に関与すると思われる因子の遺伝子発現動態の検索を進めている。ブレオマイシン肺障害やエンドトキシン肺障害で、転写因子CEBPδの発現に違いがみられ、肺胞上皮細胞の増殖と関連した発現が得られている。現在この変化の意義を検索している。さらに、HGFやTGF-βの発現が線維化の強いところに同じ程度に観察され、これらのバランスによって線維化が起こる可能性が示唆されている。4.C/EBPαとC/EBPδ欠損マウスの検索-C/EBPα欠損マウスは、肺胞上皮細胞の増殖がみられるも、呼吸不全を惹起することからその原因を検索中である。
|