研究課題/領域番号 |
08457416
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
麻酔・蘇生学
|
研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
井上 和秀 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 室長 (80124379)
|
研究分担者 |
上野 信哉 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 研究員
小泉 修一 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 研究員 (10280752)
|
研究期間 (年度) |
1996 – 1998
|
キーワード | ATP受容体 / 痛み / 侵害受容器 / 電気生理学 / 細胞内カルシウム濃度 / 後根神経節ニューロン |
研究概要 |
イオンチャンネル型ATP受容体サブクラスP2X3が侵害刺激を伝える後根神経節(DRG)ニューロンC線維の侵害受容器に限局して発現していることが明らかにされ、「ATPと痛み」の関係が注目されてきた。痛み伝達の機能はP2X3とP2X2のヘテロポリマーにより担われているとの指摘もあるが詳細についてはほとんど未検討であったので、我々はまずラットグリオーマ由来細胞C6BU-1あるいはヒト腎臓上皮細胞由来HEK293にP2X3およびP2X2のcDNAを強制発現させた系を用いて、細胞内カルシウム濃度([Ca]i)および電気生理学的指標により痛みの情報伝達におけるATP受容体群の生理機能に関する基礎研究を行った。その結果、ATP刺激により、P2X2発現系では比較的な大きな特続的な内向き電流が引き起こされ、P2X3発現系では比較的小さく急速に減少する内向き電流が引き起こされた。P2X3およびP2X2同時発現系では、ATP刺激により両者の中間に位置する性質を持った内向き電流が引き起こされた。濃度依存性の検討ではP2X3発現系ではATPの高濃度(>30uM)から作用が認められたが、P2X3発現系ではより低濃度(>1uM)から作用が認められた。P2X3およびP2X2同時発現系での用量作用曲線はそれぞれ単独とは明らかに異なり、両者のほぼ中間に位置した。Caイメージでは、P2X2発現系では、ATPによりかなり大きな[Ca]i上昇が認められ、αβ-メチレンATPには全く反応しなかった。一方P2X3発現系では、[Ca]I上昇は非常に小さいかあるいはほとんど認められなかったが、αβ-メチレンATPには一度だけ大きな反応を示した。P2X3およびP2X2同時発現系では、ATP刺激により安定した大きな[Ca]I上昇が認められ、さらにαβ-メチレンATPに対する反応性も獲得した。このように、P2X3およびP2X2同時発現系はそれぞれの単独発現系とは明らかに異なる性質を示し、おそらくヘテロな発現系として機能していることが推察された。ヘテロになることにより[Ca]i上昇は有利となり、おそらく生理的意義もこの点にあるのではと考えられる。そこで今年度は、実際DRGでの反応と比較検討し、痛み情報伝達におけるATP受容体群の性質を明らかにすることを試みた。その結果、DRGには形態的に大、中、小の神経細胞があり、電気生理学的指標によれば、知覚神経毒カプサイシンに感受性を示すのは中核および小型細胞であり、それぞれの細胞でATP誘発電流の性質を調べたところ、中型細胞ではP2X2+3のヘテロ発現系に、小型細胞ではP2X3モノ発現系に近似した性質を得た。mRNAのin situ hybridizationの結果もこれと良く一致し、小型細胞ではP2X3のみが、中型細胞ではP2X2とP2X3のmRNAが発現していた。大型細胞ではこれらの発現はなかった。以上、生体ではATP受容体P2X2およびP2X3が知覚発生・伝達に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
|