研究課題/領域番号 |
08457419
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
加藤 哲郎 秋田大学, 医学部, 教授 (40004642)
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研究分担者 |
小倉 泰伸 秋田大学, 医学部, 助手 (00282187)
土谷 順彦 秋田大学, 医学部, 助手 (70282176)
三浦 直行 秋田大学, 医学部, 助教授 (40165965)
佐藤 一成 秋田大学, 医学部, 講師 (90270842)
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キーワード | 血管新生因子 / 微小血管密度 / P53変異 / 膀胱癌 |
研究概要 |
本年度は膀胱癌を研究対象とし、以下の結果を得た。 1.表在性膀胱癌は膀胱癌の約2/3を占め、膀胱温存手術後に再発を繰返すことが特徴的であるが、血管新生との関係が不明であった。新鮮症例手術標本に免疫染色を施して、代表的な3種の血管新生因子(VEGF,aFGF,bFGF)の発現を観察した結果、これら生理活性物質は正常組織にはほとんど発現してないが腫瘍組織に高頻度に発現することを明らかにすることができた。また正常部に比して腫瘍部の粘膜下間質では微小血管の密度が有意に高く,血管新生が惹起されていることが示された。しかし血管新生因子の発現と微小血管密度との間には負の相関があったことから、基底膜上にとどまる表在性膀胱癌では、これら生理活性物質は血管新生よりは腫瘍細胞自体の増殖能に関与している可能性が強く示唆された。 2.いっぽう分子生物学的検索では、血管新生因子VEGF遺伝子は表在性膀胱癌よりも浸潤性膀胱癌で発現が亢進しており、また癌抑制遺伝子P53の変異にも同様の傾向をみた。最近、VEGFの発現にP53が関与するするとのin vitro成績が報告されたが、今回われわれが分析対象としたヒト膀胱癌ではVEGFの発現とP53遺伝子の変異との間に関連を見出すことはできず、VEGFの発現にはP53以外の制御機構が作用していると考えられた。 以上の知見は、いわゆる血管新生因子とされている生理活性物質が血管新生のみに関与するのではなく、腫瘍増殖能にも積極的に関与する可能性を示唆しており、今後この点を踏まえた研究を行う予定である。
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