前立腺組織におけるα_1-アドレナリン受容体を介した上皮・間質の相互作用

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457421
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 河邉 香月 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (20124670)
• 研究分担者: 武内 巧 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (90167487) ; 亀山 周二 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90186015) ; 森山 信男 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80143501)
• キーワード: ヒト前立腺組織 / 前立腺肥大症 / α_1-アドレナリン受容体 / 細胞培養 / in vitro autoradiography

研究概要

1.ヒト前立腺組織内平滑筋細胞の培養
ヒト正常ならびに肥大前立腺の平滑筋細胞を培養し、in vitroでのα-_<1a>-アドレナリン受容体の作用を検討した。ヒト前立腺手術検体より、間質成分の培養を行い、ついでMonoclonal mouse anti-human muscle actin(DAKO-MUSCLE ACTIN,HHF35)をコートしたビーズを作用(平滑筋細胞を特異的に吸着)させた後、再培養した。細胞は光顕的にHHF35に陽性であった。また電顕的には胞体内、特に細胞膜直下にtonofilamentの出現を認め、細胞表面にmicrovilliが散見された。これらの細胞にα_1-アドレナリン阻害剤(tamsulosin;10nM)を1時間作用させ、ただちに同薬剤を含む2% glutaraldehydeで同定して電顕的観察を行った。筋細胞は単位面積あたりのmicrovilliの減少、細胞のinfoldingの減少などの弛緩像を示した。同様にα_1-アドレナリン刺激剤(phenylephrine;100nM)を作用させたところ、筋細胞の収縮像を呈した。以上より、現段階では前立腺平滑筋細胞を効率よく数次まで培養可能である。また前立腺平滑筋培養細胞はα_1-アドレナリン阻害剤並びに刺激剤に形態学的に反応し、臨床効果を裏付けた。
2.α_<1L>サブタイプのヒト肥大前立腺組織における局在の検討
JTH-601(選択的α_<1L>拮抗剤)の[^3H]ラベル体をligandとして、ヒト前立腺肥大症組織内の局在をin vitro autoradiographyで解析した。手術時に得られた前立腺組織の全割標本を作成し、OCTに包埋後、凍結保存した。標本は10μmの連続切片とし、α_<1L>受容体のligand([^3H]-JTH-601)を用いて、肉眼的オートラジオグラフィーを行った。[^3H]-JTH-601の局在が腺腫結節部ならびに周囲間質部に広汎に認められた。すなわち、ヒト肥大前立腺組織において明らかに[^3H]-JTH-601の結合部位(α_<1L>受容体)が認められた。以上より、α_<1L>受容体の阻害剤は肥大前立腺組織の平滑筋の収縮・緊張に関与しうることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Homma,Y.,Kawabe,K.,et al.: "Injection of glutaraldehyde cross-linked collagen for urinary incontinence:Two-year efficacy by self-assessment." Int.J.Urol.3. 124-127 (1996)
• [文献書誌] Homma,Y.,Kawabe,K.,et al.: "Estimate criteria for diagnosis and severity in benign prostatic hyperplasia." Int.J.Urol.3. 261-266 (1996)
• [文献書誌] Homma,Y.,Kawabe,K.,et al.: "Estimate criteria for efficacy for treatment in benign prostatic hyperplasia." Int.J.Urol.3. 267-273 (1996)
• [文献書誌] Moriyama,N.,et al.: "Decreased contractile effect of endothelin-1 on hyperplastic prostate." Gen.Pharmacol.27. 1061-1065 (1996)
• [文献書誌] Nasu,K.,Moriyama,N.,et al.: "Quantification and distribution of al-adrenoceptor subtype mRNAs expressed in human prostate:comparison of benign hypertrophied tissue and non-hypertrophied tissue." Br.J.Pharmacol.119. 797-803 (1996)
• [文献書誌] Takeuchi,T.,et al.: "Modulation of growth and apoptosis response in PC-3 and LNCAP protate cancer cell lines by FAS." Int.J.Cancer. 67. 709-714 (1996)