研究概要 |
1.液胞型H^+輸送性ATPase(V-ATPase)の局在 : 種々のサブユニットに対する抗体を用い光顕、電顕免疫組織染色で検討した結果、V-ATPaseはヒトを含む哺乳類の膀胱最外層の成熟上皮細胞の腔面形質膜に特異的に局在していた。 2.尿の酸性化 : V-ATPaseの特異的阻害剤であるBafilomycinを使用する実験系において、少なくともマウス膀胱においてプロトンがV-ATPaseを介して膀胱腔に放出されていることが明らかとなった。 3.大腸菌の膀胱付着とV-ATPase : 1型(マンノース感受性)線毛保有大腸菌によるマウス尿路感染症実験系において、膀胱局所のV-ATPase活性を阻害することで易感染性状態が惹起可能であった。 4.三次元膀胱培養系 : 上記1,2,3の実験を三次元膀胱培養系で実証しようと試みたが、目的とした成熟最外層上皮細胞の誘導が局所的にとどまり、結果として意図した実験系を組み立てるまでには至らなかった。 5.膀胱最外層上皮の再生とV-ATPase : 上記4の実験の代替として、マウス膀胱最外層上皮のみを低濃度のトリプシン(0.1%,30分)で剥離する系を考案し、上皮の再生とV-ATPaseのm-RNAの発現をNorthern blotting、V-ATPaseの膜発現をWestern blottingで解析した。その結果、これらの発現は上皮の再生に一致して明らかに増加した。 以上の成績より、膀胱におけるV-ATPaseはプロトンの膜輸送により、感染防御能や不透過膜(Blood-urine barrier)の保持という膀胱の根源的機能を担っているものと推察された。
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