研究概要 |
ラットの組織片培養 コラーゲン・ゲルマトリックス内で上皮と間質細胞及び細胞外マトリックスを同時に含む前立腺の組織片を培養し、更に脂肪細胞を間質として混合培養し、核が基底層に配列し、かつ明調な細胞質を有する分化の良好な腺房様構造を形成した。組織片単独培養群を対照群とし、脂肪細胞との混合培養群、及びdihydroteststerone(DHT),estrogen(EST)添加群につき再構築腺房様構造及び周囲の間質細胞の増殖・分化に関し、新たな検討を加えた。 1 増殖能の検討。(培養2週間後のウリジンの取り込み率) 1 上皮細胞の増殖能 脂肪細胞混合培養+DHT+EST群が最も高い取込み率を維持していた。 2 問質細胞の増殖能 EST投与群に正の相関傾向が見られた。 2 分化の検討。 1 いずれの培養群でも明瞭な基底膜を形成した。脂肪細胞混合培養群が対照群よりも活発なfoot processを形成した。(鍍銀染色、電子顕微鏡) 2 再構築腺房様構造の細胞質内の脂肪滴は、脂肪細胞混合培養群が対照群に比し小型でかつ多数認めた。(Oil red-O染色、電子顕微鏡) 3 腺腔内腔面の微絨毛は脂肪細胞混合培養群、DHT投与群で、対照群よりも活発に発育していた。(電子顕微鏡) 4 DHT,EST投与群では再構築腺房様構造の一部に扁平上皮化生を認め、一部篩状に増殖する部分もあった。 5 ラット前立腺背側葉の特異蛋白プロベシンは、in vivoでアンドログン依存性であるが、自験例ではいずれの条件下でも発現し、免疫組織学的に有意差は認められなかった。 これらは前立腺の腺房構造の維持に、epithe1ial and stromal interactionが重要であると同時に性ホルモンの密接な関与を裏付ける結果であった。
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