ヒト前立腺の老化に関する研究-特に前立腺肥大症の発生機序と前立腺平滑筋の老化について-

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457427
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 塚本 泰司 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50112454)
• 研究分担者: 舛森 直哉 札幌医科大学, 医学部, 助手 (20295356) ; 宮尾 則臣 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40200125)
• キーワード: aging prostate / smooth muscle cell / in vitro culture / contractile response

研究概要

本年度は1)ヒト前立腺平滑筋細胞のin vitroモデルの確立、2)前立腺平滑筋の加齢による機能的変化、を主に検討した。
1)ヒト前立腺平滑筋細胞のin vitroモデルの確立:これまでは、ヒト平滑筋培養細胞の樹立が困難であったことから、モルモット前立腺平滑筋培養細胞の樹立を試み、その成果を報告した。今年度はこれまでに引き続きヒト前立腺平滑筋培養細胞の樹立を試みた。培養条件を種々に変化させることにより、安定した増殖が得られるようになり、ヒト前立腺平滑筋由来と思われる培養細胞を樹立しつある。現在、この細胞の生物学特徴の特定を行っているが、平滑筋細胞由来を示すalpha-smooth muscle actinの発現を認めている。この培養系の確立により、前立腺平滑筋の電気生理学的研究を容易におこなうことができるばかりでなく、前立腺間質におけるfibroblast-myofibroblast-smooth muscle cellへの形質転換の可能性の機序を詳細に検討できることが考えられる。
2)前立腺平滑筋の加齢による機能的変化
モルモット前立腺平滑筋の収縮に関し、加齢による変化との関係を検討した。前立腺より得た平滑筋切片の高濃度KClに対する等尺性収縮の検討では、8週齢の若年モルモットと12か月齢の高齢モルモットでは単位質量当たりの張力において差を認めなかった。アルファ交感神経作動薬であるphenylephrineによる収縮では、その張力は濃度依存的に増大した。8週齢のモルモットと比較して、12か月齢のモルモットの前立腺平滑筋のほうが収縮張力が低下していた。
3)今後は、ヒト前立腺平滑筋培養細胞を用い、前立腺間質におけるfibroblast-myofibroblast-smooth muscle cellへの形質転換を検討し、さらに加齢による前立腺平滑筋の収縮張力の差の本体を検討する必要がある。

研究成果

• [文献書誌] Tsukamoto T,et al.: "Epidemiology and natural history of benign prostatic hyperplasia" International Journal of Urology. 4. 233-246 (1997)
• [文献書誌] Roberts R0,Tsukamoto,T,et al.: "Association between cigarette smoking and prostatism in a Japanese commjnity" The Prostate. 30. 154-159 (1997)
• [文献書誌] Mikuma N,Furuya S,Tsukamoto T,et al.: "Morphological and pharmacological characterization of guines-pig prostatic smooth muscle cells in in vitro." International Journal of Urology. 4. 186-190 (1997)
• [文献書誌] Masumori N,Tsukamoto,T,et al.: "Age-related differences in internal prostatic architecture on transrectal ultrasonography:Results of a community based survey" Journal of Urology. 157. 1718-1722 (1997)
• [文献書誌] Furuya S,Tsukamoto,T,et al.: "Transurethral baloon laser thermotherapy induces long-lasting apoptosis of prostatic smooth muscle cells in human hyperplasia." Med.Electron Microscopy. 30. 235-239 (1997)