研究概要 |
妊娠末梢血中にごく微量存在する胎児由来の有核細胞を用いた出生前診断法を臨床応用するための基礎研究として、FACS(fluorescence ac-tivated cell sorting)とFISH(fluorescence in situ hybridization)法を用いて胎児由来の有核赤血球を検出・解析し、以下の結論を得た。 1.有核赤血球に特異的な抗体を組み合わせることで、FACSを用いて妊婦末梢血より有核赤血球を分離・濃縮することができた。2.正常妊婦では、妊婦末梢血中の有核赤血球の存在比率は妊婦の経過に伴い有意に減少する傾向があった。3.男児を妊娠している妊婦末梢血からFACSにより分離・濃縮された有核赤血球に対して、FISH法により胎児細胞の同定を行ったところ、平均3.3個のY染色体陽性細胞が確認できた。正常妊婦の末梢血中に存在する有核赤血球の約5%が胎児由来であり、残りの多くは母体由来であった。4.本法による胎児性別診断のspecificityは100%であり、sensitivityは88%、negative predictive valueは86%,positive predictive valueは1005であった。 以上より、妊婦末梢血からFACSを用いて有核赤血球を分離・濃縮することができ、FISH法による胎児細胞の同定も可能であった。特に、染色体異常に対する出生前診断のスクリーニングに近い将来応用できることが示唆された。しかし、純粋な胎児細胞を分離・濃縮しなくては、遺伝子診断をはじめとした本法による出生前診断へのさらなる応用は難しいと考えられ、新たな抗体の開発や分離・濃縮法のさらなる改善が望まれる。
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