研究概要 |
今年度は解析方法の改良と卵巣癌検体の収集を中心に研究を進めた. PCRを利用したTRAPアッセイの開発によって,テロメラーゼ活性の測定感度の飛躍的に上昇したが,十分な測定値の定量性を得るには至っていなかった.我々は従来のPCRプライマーのデザインを改良し,Hela細胞株をモデルとして活性測定を繰り返した結果,10の4乗の細胞数の範囲で良好な細胞数依存の活性勾配が得られた.さらに,このプライマーを蛍光標識し,オートシーケンサー上で電気泳動ならびにコンピューター解析を行うことに成功した.テロメラーゼによって産生された階段状蛍光バンドは,フラグメント解析プログラムを用いてより正確に客観的に定量可能となった. 同時に,卵巣癌細胞株,卵巣癌原発腫瘍・転移腫瘍・化学療法後再発腫瘍の新鮮手術標本ならびに病理組織標本の収集に努めた.これら検体は,多彩な組織型・進行期・癌遺伝子の発現を呈しており,量的のみならず質的にも今後の解析対象として十分耐えうるものと考えられる。 次年度は,新しく開発した上記測定系を用いてテロメラーゼ活性の量的評価を行い,この結果を進行期・組織型・分化度などの臨床データならびに各種癌遺伝子・組織周期関連遺伝子の発現と照合することにより,テロメラーゼの発癌機構における役割および臨床応用の可能性を検討する予定である.
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