研究概要 |
我々は子宮筋由来の培養細胞を用いてHCGが子宮筋腫細胞にどのような作用があるのかを検討した結果、HCGの添加により子宮筋培養細胞で軽度増殖を認め、肉腫細胞の増殖には影響を与えなかったが、子宮筋腫細胞においては著明な細胞増殖を認めた。また子宮筋腫細胞においてp34cdc2,cyclinEなどの細胞周期調節因子が誘導されることからHCGは子宮筋腫細胞に対して増殖作用を持つことが示唆された。また培養子宮筋腫細胞を用いてGn-RHaが子宮筋腫細胞にどのような作用があるのかを検討した結果、子宮筋においては、Gn-RHa添加により細胞周期調節因子、腫瘍抑制遺伝子のいずれの変化も認められなかったが、筋腫細胞ではc-raf,cyclinE,P33cdk2の著明な発現の抑制が観察された。これらのことよりGn-RHaは筋腫細胞に対して選択的かつ直接的に作用し、cyclinEなどの細胞周期G1期調節因子の発現を抑制することから、細胞周期G1期に作用し増殖抑制をする可能性が示唆された。更に子宮筋腫には、細胞周期調節因子であるcyclinE、p34cdc2,p33cdk2、および発癌遺伝子c-rafなどの異常発現があり、その発現異常の程度は子宮肉腫により近いものであった。このことは子宮筋腫を良性腫瘍としてとどめるために一方で強力な細胞増殖抑制因子が作用している可能性を示唆した。また子宮筋腫には、p16,p21,p53などの腫瘍抑制因子の異常発現が見られる事より、筋腫では、細胞周期調節因子や発癌遺伝子の異常発現があるものの、腫瘍抑制遺伝子の発現により、より正常に近い機能を持つことによって良性腫瘍としての性格を維持しているのではないかと考えられた。
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