研究概要 |
蝸牛コルチ器内における支持細胞の役割は単純な支持作用のみであるのかあるいは何らかの機能を有しているか未だ見解の一致を見ていない。本研究では、支持細胞に存在するpurinergic receptorに注目し、その機能、亜分類、分布について検討を加えた。対象としたものはモルモット蝸牛コルチ器のDeiters cell,Hensen cell,Piller cellであり、麻酔断頭後コルチ器を採取し酵素処理して単離した。パッチクランプホールセルモードにて誘発電流を測定した。Deiters cell,ではpharyngeal process基部で最大となり最短の潜時を示した。一方Hensen cellでは内リンパ腔側で最大の反応を示した。Deiters cellのpurinergic receptorの存在部位は外有毛細胞基底部の位置する場所であり、近年Deiters cellにも遠心性繊維が直接分布しているとの報告を総合するとATPは遠心性繊維よりアセチルコリンのco-transmitterとして分泌されていることが示唆された。Hensen cellではその存在部位から内リンパのイオン組成の調節に関与が示唆された。Deiters cell,Piller cellでは二次的な細胞内カルシウム濃度上昇によるstiffnessの変化がおきる可能性があり最終的にはコルチ器の振動特性を変化させうるものである。purinergic receptorの真の生理作用はいまだ不明であるが、先に述べた仮説を検証するためにも今後カルシウムイメージング、画像処理による細胞運動の解析を行っていきたい。
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