聴覚生理あるいは神経難聴の病態解明のため、聴覚伝導に関与する蝸牛あるいは細胞レベルにおいて、イオン輸送系について研究を行う目的にて本年度の研究をすすめた。第一に、蝸牛内リンパ液環境を種々の条件に変化させ、その時の蝸牛内静止電位や蝸牛マイクロイオン電位等をin vivoで測定し、その結果をより詳細に、あるいは統括的に解析できるように、データ解析装置(マックラブ4S)とパーソナルコンピューター(マッキントッシュパワーブック5300c)を設置した。より周波数分析能の高い条件下にて記録することが可能となった。第二に、蝸牛内の細胞レベルでの研究を行う目的で、細胞内環境を変化させるべくCaged物質を使用する目的であるため、この薬剤を活性化するためのケージド試薬投光管(オリンパスIMT2-RFA-Caged)を設置した。本年度は、紫外光の照射条件を安定化させるため、一種類のCaged物質を用いてその調整を行った。今後は、種々のCaged物質を用いて細胞内環境を様々な条件に変化させる予定である。本年度以降の研究費により、その試薬を購入する予定で、その結果様々な新知見が得られるものと思われる。第三に、電極作製の安定化のためにマイクロピペット製作器(成茂科学PC10)を設置した。パッチ電極の性能が改善され、この電極を用い、有毛細胞トランスデューサーチャネルに対するガドリニウムイオンの影響を検討した。これはHearing Researchの第101巻に発表した。
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