研究概要 |
ヒトの感音難聴は遺伝性のものが多いにも関わらず,同定されている遺伝子は数少ない。その理由としては,ヒトでの遺伝子解析の困難と,生体から内耳の組織採取ができないためである。本研究では,聴覚障害モデル動物を用いて感音難聴の病態解明を行った。 当該年度には,行動異常マウスとして知られていたWriggle Mouse Sagamiを検討した。本マウスはホモ接合体のみ,生後約2週で振戦,首振り運動,回旋運動などの行動異常を呈する。このマウスの聴覚を、聴性脳幹反応により測定し,高度難聴であることを初めて明らかにした。 また,本マウスの内耳の形態異常を初めて同定した。蝸牛ならびに球形嚢に病変を認めた。蝸牛病変は,生後2週,1カ月には出現しないが,その後蝸牛全回転で有毛細胞の消失,ラセン神経節細胞の減少が観察された。 以上から本マウスは内耳奇形マウスであり,ヒト内耳病変の実験動物モデルであることが判明し,原因遺伝子同定のために,遺伝子単離のポジショナルクローニングを開始した。遺伝子座は染色体6番に存在することが,現在までに分かっているので,マッピングされた位置に対応するゲノムDNAを酵母人工染色体によりクローン化した。今後,これを更にコスミドに再クローニングし,エクソントラッピング法や,内耳のcDNAと対応させる方法などにより,原因遺伝子を同定する。また,遺伝子のシークエンス決定により構造を解析し,内耳奇形の原因である変異を同定する。
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