研究概要 |
我々はこれまでに,角膜上皮におけるcDNA解析プロジェクトを実施し,角膜上皮に特異的に発現している数種の未知の遺伝子の3'末端部分の塩基配列を決定した。本研究では,これらの遺伝子の全塩基配列の決定を行い,機能を類推した。 外科的処置の際に採取したヒト角膜上皮がpoly A+RNAを抽出し,cDNAを合成した。このcDNAにEcoRI linkerを接合し,λZAPIIベクターのアームに組み込んだ後,パッケージングを行い,cDNAライブラリーを作成した。つぎに,3'末端の塩基配列を含むクローンから作成したプローブを用いてcDNAライブラリーのスクリーニングを行い,陽性プラークを単離した。これらのプラークのインサート部分の塩基配列を決定し,コンピューターで連結させて,全塩基配列を決定した。 上記の角膜上皮に特異的な遺伝子のうち,これまでに3つの全塩基配列の決定に成功した。ひとつは498アミノ酸をコードしており,コピュータ-によるホモロジー検索では,マウスのケラチン12と79%,ウサギのケラチン12と85%の相同性を示していたことから,ヒトのケラチン12遺伝子であると考えられた。ケラチン12は角膜上皮に特異的な中間系線維であるとされており,今回初めてヒトのケラチン12遺伝子の塩基配列の決定に成功した。他の2つの遺伝子は,モチーフ検索により,ライソゾーム蛋白,膜蛋白と考えられた。前者においては,種々の組織でRT-PCR法でmRNAの発現の検討を再度行ったが,角膜上皮にのみ強いシグナルが得られた。
|