研究概要 |
(目的)短小腸モデルでArgの腸管の成長と消化吸収能に及ぼす効果を検討した。(材料と方法)雄性、SD系4週ラットに90%小腸切除(回盲弁と回腸末端5cm温存)を試行後、代謝ケージに収容し、術後第1日目からエレンタールPを基本食とし、4日目から2群に分け、ArgかGlyを添加、等熱量、等窒素量になるよう調整、40kcal/匹/日(50ml/匹/日:1群;Arg186mg,Gly30mg/日、2群;Arg86mg,Gly90mg/日)で飼育、開腹術あるいは回盲弁から5cm口側で単吻合し同様に管理した群を対照とし3週間目と6週間目にANOVA(p<1.05)で比較した。検討項目は体重、残存小腸長、血漿アミノグラム、ヒトGHRH負荷試験に対する血漿ラット成長ホルモン(GH)濃度、血漿総ソマトメジンC(Sm-C)濃度、および回腸粘膜繊毛高とした。更に上腸間膜静脈でマイクロダイアリシスサンプリングシステムを用いたアミノ酸吸収能評価の可能性も検討した。(結果)1)残存回腸長は6週で差を認めた(1群>2群)。2)尿素回路関連血漿アミノ酸とGly濃度(nmol/ml)は3週目Argは(1群>2群)、Glyは(1群<2群)であった。Cit(1群<2群)で投与Argおよび小腸切除自体に影響され変動した。6週目1と2群間ではGlyのみ差を認め、Citは1、2群とも対照より低下、Argは(1,2群NS)と吸収能の代償を示した。3)1群でヒトGHRHに対するGH分泌能が対照群と同様に維持された。血漿総Sm-C濃度は短小腸群で低値であった。4)残存回腸粘膜繊毛高は(1群>2群)であった。5)6週齢ラットの回腸係蹄5cmでのGlu注入後の上腸間膜静脈のマイクロダイアリシスでCit濃度は増加しArg濃度は低下した。組織検査で2群のみに腎間質の線維化を認めた。(まとめ)広範小腸切除後にArgの小腸長に対する成長促進効果と吸収能の代償が示唆されArgがGHの代用となる可能性が示された。吸収能の回復を明らかにする手段にマイクロダイアリシスを利用したアミノ酸分析は有用と考えられた。腎の線維化は更に検討が必要である。
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