本研究では、腺組織におけるEBVのin vitro感染モデル系を樹立し、それを用いSS患者唾液・涙液または生検材料から得た蛋白で反応させることにより、SSでのEBV活性化誘導能を検討すると共に、活性化に関与するシグナル伝達系の詳細を2年間にわたって検討した。BZLF-1プロモータCATが導入されたHSG細胞を用いたサイトカインの反応性はEGF、TNF、IL-10で明らかなCAT活性が認められた。TNFやIL-10は従来の報告でも患者唾液に多く存在することが報告されており、唾液腺由来であるとされている。またこれらサイトカインの産生は自己抗原を介した自己反応性リンパ球の活性化により誘導されることが知られており、更に、SSの病因として考えられているEBVの再活性化でも生じることが報告されている。従来これらのサイトカインの病態形成への関与は十分な解明はなされておらず、唾液腺局所でのサイトカインの発現は、細胞接着分子発現の誘導リンパ球浸潤の誘導ならびに活性化、腺組織破壊への関与などが考えられてきた。今回の検討から、これらに加え唾液腺上皮細胞に潜伏感染しているEBVの再活性化を誘導することが示唆され、新たな病態への関与が示された。BZLF-1プロモータへのシグナル伝達経路を解析する目的から、チロシンリン酸化に対す抗体やMAPキナーゼによるリン酸化を認識する抗体を用いウエスタンブロットを行った。EGF刺激でチロシンリン酸化が認められたことから、BZLF-1プロモータへのAP-1結合にかかわる因子のチロシンリン酸化が関与している何らかの転写調節因子の存在が示唆された。今回の検討ではJAKSTATの経路は検出されなかったが、STATには種々のサブタイプが近年報告されており、今回の検索では入手可能な抗体での検討であることから、この経路の検討は今後の検討課題としたい。
|