研究課題/領域番号 |
08457477
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
朔 敬 新潟大学, 歯学部, 教授 (40145264)
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研究分担者 |
木村 信 新潟大学, 歯学部, 助手 (80251825)
程 = 新潟大学, 歯学部, 助手 (40207460)
福島 祥紘 新潟大学, 歯学部, 助教授 (00018631)
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キーワード | 腺様糞胞癌 / 扁平上皮癌 / 基底膜 / 免疫沈降 / スラミン / ヘパラン硫酸プロテオグリカン / ヘパラナーゼ / ストロメライシン |
研究概要 |
本年度は以下の実験をおこない、培養唾液腺腺様糞胞癌由来ACC2/3、舌扁平上皮癌由来ZK-1/ZK-2、および歯肉扁平上皮癌由来MK-1の5種類の細胞系が自ら基底膜分子を生合成して細胞外に沈着し、かつ自身の分解酵素によってこれを改造していることを示唆する所見をみいだした。またACC3細胞をもちいた実験により、ヘパラナーゼ等の酵素活性を阻害する試薬スラミンによって障害される基底膜分子代謝調節因子の存在が示唆された。 (1)細胞培養:上記5種の細胞系を35mmまたは60mmペトリ皿で単層培養し、免疫沈降実験のため_<35>S-硫酸と^3H-ロイシンによる標識を行った。またACC3細胞に関してはスラミン存在下で同様に標識した。 (2)免疫染色:各単層培養細胞は、培養開始後24時間毎に固定し免疫染色をおこなった。基底膜分子:IV型コラゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、フィブロネクチンおよびこれらの分解に関与すると推定される酵素、MMP2、MMP9、ストロメライシン、ウロキナーゼ、プラスミン、ヘパリチナーゼ、ヘパラナーゼ、カテプシンDに対する各抗体とロ-ダミン標識二次抗体を用いて染色をおこなった。ZK-1/ZK-2、MK-1ともにACCと同様に細胞内での基底膜分子の生合成開始と同時に細胞質内に酵素の発現がみられ、基底膜分子の細胞外沈着開始後に酵素群も細胞外空間に放出されていることが確認された。 (3)免疫沈降法による基底膜分子および酵素分子の検出:前項1)のように標識培養された細胞の細胞層および培養上清について、前項2)でのべた抗体をもちいて免疫沈降をおこない、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動およびフルオログラフィーで可視化した。ヘパラン硫酸プロテオグリカンをはじめとする基底膜分子は5種すべての細胞系で検出されたが、その合成量はMK-1細胞で最も少なかった。一方、ストロメライシン、ウロキナーゼはMK-1で最も合成能が高く、この細胞の基底膜分子分解能の高さを示すとともに転移能との関連が示唆された。 (4)スラミンのACC細胞への影響:前項1)のようにスラミン存在下で標識し、前項3)と同様に免疫沈降をおこなうとパラン硫酸プロテオグリカンおよびフィブロネクチン様の蛋白質が培養上清に大量に検出され、細胞表層への基底膜分子の沈着および正常な分解代謝が阻害されていると考えられた。またスラミンにより接着阻害および形態変化も引き起こされることから、ACCの細胞表層にはスラミンによって障害される基底膜分子代謝調節因子が存在することが判明した。
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