研究概要 |
Porphyromonas gingivalis 381株菌体から精製した線毛をビオチン化し,Enzyme-linked biotin-avidin(ELBA)法により,菌体の付着量の定量に用いた.各種の基質タンパク質を固相化後,線毛の付着を比較検討したところ,フィブロネクチン,コラーゲン,ラミニンなどに対して非常によく付着することが明かとなった.また本菌線毛は正常ヒト皮膚線維芽細胞にも高率に付着するが,上記のタンパク質類によって著しく抑制された.このことより,線毛の付着ターゲットは基質タンパク類であると考えられた.一方,P.gingivalis 381株菌体から合成基質であるbenzoyl-L-arginine p-nitroanilide(L-BAPNA)の分解を指標にプロテアーゼを精製し,固相化した基質タンパク質あるいは培養した線維芽細胞を本酵素で前処理すると,線毛の付着が著しく促進された.この作用はプロテアーゼインヒビターによって抑制された.さらにジペプチド(Gly-X)をリガンドするアフィニティカラムを作製後,線毛とリガンドとの親和性を解析したところ,線毛はArg残基に対してのみ親和性を有することが明かとなった.以上より,プロテアーゼの作用によって宿主組織のマトリックスタンパク質が部分分解を受けることによってArg残基が表面に露出する結果,線毛の付着が促進されるものと考えられ,P.gingivalisの宿主歯周組織への感染においてプロテアーゼが重要な働きを果たすと示唆される.
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