研究概要 |
本研究の目的は黄色ブドウ球菌溶菌酵素の活性制御機構であった。私共は黄色ブドウ球菌を化学合成培地で培養し、放射性メチオニンで標識したのち未標識のメチオニンを加えるチェース実験を行った。その結果、抗ATL血清で免疫沈降される蛋白質は138kDaから115kDa,85kDa,62kDa,51kDaと分子量の小さなものに変化していった。このことからatl遺伝子産物は分泌された後にプロセシングを受けることが明らかとなった。また菌体に存在するatl遺伝子産物を精製し、その酵素活性を上滑より精製したものと比較検討した。その結果、菌体由来の62kDa,51kDa蛋白質は上清由来の62kDa N-acetyl muramyl L-alanine amidase(anmidase)、51kDa endo-beta-N-acetylglucosaminidase(glucosaminidase)であることが明らかになった。さらにatl遺伝子産物に対する抗血清を用いた免疫電子顕微鏡観察によってatl遺伝子産物は高塩濃度3M LiClによって菌体から遊離するものと遊離しないものの2種に分けられ、遊離するものに成熟型の62kDa amidase,51kDa glucosaminidaseが多く、遊離しないものに高分子量138kDaのものが多いことが明らかとなった。このことからatl遺伝子産物は分泌されたのち、あるいは分泌途中では他の因子と強固に結合しており、その後プロセシングを受けると遊離型になって上清中に放出されることが示唆された。atl遺伝子産物が結合する因子が何であるかを検討したが、蛋白質性ではないという以外、はっきりとした成分として精製するには至らなかった。
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