硬組織の形成と崩壊の機序に関する研究は歯科医学における最も重要なテーマの一つであるが、基礎的研究はあまり進んでいるとはいえず、分子レベルで説明できることは非常に少ない。硬組織形成は単に石灰化の問題だけではなく、そこには上皮-間葉系細胞間あるいは細胞と細胞外基質間の相互作用と関連した細胞増殖、分化の機構解明という細胞生物学的に基本的な問題や硬組織の吸収機構の解明までも含まれており、これらの問題について以下のように多角的に解析を行った。 1.エナメル質の石灰化に重要な働きをしていると考えられているウシ・エナメリンのcDNAクローニングをおこない塩基配列、およびタンパク質の一次構造を部分的に決めた。 2.マウス・アメロジェニン遺伝子プロモーター領域および発現調節領域の単離と塩基配列の決定。 3.葉胚由来細胞のin vitroにおける石灰化と石灰化に重要と思われる遺伝子発現について検討した。 4.軟骨性化骨のモデルとして培養軟骨細胞ATDC5を用い、in vitroにおける石灰化と骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現について検討した。 5.葉の矯正移動に伴う骨のリモデリングにおけるコラゲナーゼとカテプシンKの発現をin situhybridization法により検討した。 6.乳歯歯根吸収組織のタンパク質分解酵素について遺伝子発現と活性調節を検討した。
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