研究概要 |
フェチュインは、動物種によってその生合成臓器が異なり、また年齢によってもその発現量が大きく異なるが、ラットのフェチュインは、主として肝臓でリン酸化型として合成・分泌されている。このリン酸化型フェチュインは、肝細胞の強力な増殖因子として知られている肝細胞増殖因子(HGF)の生物学的な活性を抑制することを見出し、リン酸化型フェチュインが、肝臓の過剰再生を抑えるカローンの一種であることを見出した。このリン酸化型フェチュインは、血液中で速やかに脱リン酸化されるが、この脱リン酸化型フェチュインにはHGF活性抑制作用はない。さらに我々は、ラット血清フェチュイン濃度の測定法を改良して、胎生期には低いが、出生後にその濃度が急激に増加し、2.5〜4.5mg/mlと従来報告されている値より約1,000倍高いことを見出した。フェチュインの生理的役割の1つに、種々の増殖因子の活性制御があげられており、血清フェチュインの濃度が高いことは、この生理作用が生体内でも作用していることを裏付けるものである。また、血清中の脱リン酸化型フェチュインは、骨などの石灰化組織の基質に沈着すると共に、骨芽細胞でも1部合成・分泌されている。我々は、この石灰化組織中の脱リン酸化型フェチュインが、甲状腺ホルモン(PTH)による骨吸収作用を増強することを見出した。この増強作用は、I型コラーゲンのカテプシン-Lなどに対する感受性を高めることに由来するものである。
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