研究概要 |
IL-1によって発揮される炎症性骨吸収は、インドメタシンによりPG合成を阻害すると抑制される。PG合成を調節する律速酵素はCOX-1およびCOX-2であるが、通常、骨芽細胞には弱いながら構成的にCOX-1 mRNAが発現している。一方、骨芽細胞にIL-1を作用させると、3時間をピークとしたCOX-2mRNAの著しい発現が起こり、COX-2蛋白の亢進のともない著しいPGE2産生が起こる。このPGE2産生はIL-1の骨吸収作用に必須である。PGE2合成は、骨髄を含有した器官培養系や培養液に10%血清を添加した骨芽細胞培養系において観察されるが、骨芽細胞を1%血清含有培養液で培養すると、IL-1を作用させてCOX-2誘導が起こるにもかかわらずPGE2が合成されなかった。その培養後にアラキドン酸を添加したところ、数分以内にPGE2が合成された。すなわち、IL-1はCOX-2誘導によりアラキドン酸をPGE2へ変換させることはできても、骨芽細胞からアラキドン酸の遊離を促すことができないことが明らかとなった。マウス骨芽細胞には構成的にcPLA2が発現しており、IL-1により軽度の上昇を示したが、PLA2活性の上昇は起こらず、PGE2は産生されなかった。そこで、種々の増殖因子の効果を検索した結果、血小板由来増殖因子(PDGF)がcPLA2をリン酸化してその活性化を促し、アラキドン酸供給を促すことが明らかとなった。一方、COX-2の誘導はIL-1のみならずIL-6によっても起こること、両サイトカインは相乗的にCOX-2遺伝子を発現させ、PGE2産生を介した破骨細胞形成と骨吸収作用を発揮することが明らかとなった。また、PGE2の標的細胞である骨芽細胞には4種のPGEレセプターサブタイプ(EP1, EP2, EP3, EP4)の内、EP3およびEP4が発現していることが明らかとなった。骨芽細胞におけるPGE2産生と産生されたPGE2の骨芽細胞への作用は、炎症性骨吸収の過程において重要なステップとなっている。
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