研究概要 |
生体のカルシウムバランスは小腸からのカルシウムの取り込み、腎臓における再吸収、骨からのカルシウムの溶出と蓄積によって巧妙に調節されている。我々はこれまでに、腎臓ならびに小腸におけるビタミンDの作用を、活性型ビタミンD[1α,25(OH)_2D_3]によって特異的に誘導される24-水酸化酵素と、本酵素の発現に必須の因子であるビタミンD受容体(VDR)の発現を指標にして検討してきた。その結果、1α,25(OH)_2D_3を合成している腎臓の近位尿細管細胞ではVDRの発現が完全に抑制され、24-水酸化酵素も発現せず内分泌器官として機能することを見い出した。また、ビタミンD代謝酵素の内でこれまで精製ならびに遺伝子のクローニングがなされなかった25(OH)D_3-1α-水酸化酵素のクローニングをした。本酵素はミトコンドリア型シトクロムP450であることから、1α-水酸化酵素活性が亢進しているビタミンD欠乏ラットと本酵素活性が完全に抑制されている1α,25(OH)_2D_3を投与したラットの腎臓からmRNAを調製し、シトクロムP450でその配列が保持されているフェレドキシンならびにヘム結合領域のアミノ酸配列からdegenerate primerを構築して、RT-PCR法によってクローニングした。1α-水酸化酵素活性は2469bpの遺伝子からなり501のアミノ酸からなるP450蛋白質であった。また、本酵素は、ビタミンD欠乏食あるいはビタミンDを含む低カルシウム食で飼育した腎臓で著しくその発現が増強した。1α-水酸化酵素活性は酵素活性法によって調べた結果から、腎臓の近位尿細管細胞に局在すると報告されている。マイクロダイセクション法によって採取した近位尿細管細胞を用いて、1α-水酸化酵素mRNAの局在をRT-PCR法で調べたところ、本遺伝子は近位尿細管細胞に局在し、ビタミンD欠乏試料による飼育ならびに低カルシウム食飼育の転写段階でその発現が促進されていることが明らかになった。
|