研究課題/領域番号 |
08457499
|
研究機関 | 高知医科大学 |
研究代表者 |
山本 哲也 高知医科大学, 医学部・付属病院, 講師 (00200824)
|
研究分担者 |
植田 栄作 高知医科大学, 医学部・付属病院, 助手 (10203431)
米田 和典 高知医科大学, 医学部, 助教授 (90182849)
尾崎 登喜雄 高知医科大学, 医学部, 教授 (70031995)
|
キーワード | 口腔扁平苔癬 / ケラチノサイト / サイトカイン / 単核球 / migration / 接着因子 / チロシンリン酸化 / 細胞内シグナル伝達 |
研究概要 |
口腔扁平苔癬に罹患した粘膜上皮細胞(OLP-KC)および末梢血単核球(PBMC)を用いて、本疾患におけるリンパ球の病巣への集積機序を解明するべく検討し、以下の結果を得た。 1.OLP-KCは、サイトカイン産生能が亢進しており、GM-CSF、IL-6、TNF-α、IL-1β等のサイトカインを多量に産生した。2.OLP-KCのサイトカイン産生はLPSによって、濃度依存的に増強し、熱ショックペプタイド、さらには温熱によっても上昇した。3.OLP-KCの培養上清でPBMCを処理すると、PBMCの血管内皮細胞間隙の通過能は強く亢進し、正常の粘膜上皮細胞の培養上清との間に大きな差が認められた。調べてみると、このmigrationには、培養上清中のIL-1β、GM-CSFおよびTNF-αが関わっていた。4.PBMCのmigrationには、PBMCのCD11a、CD11b、CD18およびCD49dの発現が、さらには内皮細胞ICAM-1、VCAM-1およびE-セレクチンの発現が関わっていた。5.PBMCをOLP-KCの培養上清で処理すると、蛋白チロシンリン酸化が亢進し、PI-3キナーゼ、さらにはPKCが強く活性化され、Rho蛋白の活性化も認められた。しかしながら、FAKの活性化は観察されなかった。6.OLP-KCの培養上清によるPBMCのmigrationの亢進は、ゲニステイン、H-7、ワルトマニン、Exoenzyme C3、およびTMB-8で処理することにより、ほぼ完全に阻害された。 この結果は、KCから産生されたサイトカインによって単核球が活性化、遊走することを示唆するものである。さらに、KCを温熱、熱ショック蛋白ペプタイド、大腸菌リポポリサッカライド(LPS)、金属(Zn.Hg、Cu)の存在下で培養し、サイトカイン産生とそれに関わるシグナル伝達を検討した。その結果、1)金属にはいずれもサイトカイン産生亢進作用は認められず、他ではサイトカイン産生は亢進し、特にLPSで強く亢進した。2)サイトカイン産生亢進に伴い、PKCの活性化、蛋白チロシンリン酸化およびNF-κBの活性化が観察された。3)KC上にCD14は発現されていないものの、LPSは細胞内へ取り込まれており、LPSのシグナルはKCをPI-PLCで前処理すると消失した。これらの結果は、口腔にあってKCが外来刺激によって反応し、サイトカインを産生することを意味し、口腔扁平苔癬の一端を示しているように思われる。
|