研究概要 |
本年度は,外来性のトランスフォーミング成長因子(TGF-β)がヒト歯根膜線維芽細胞のどのような機能を制御しているのかを中心に調べた。 TGF-βは,ヒト歯根膜線維芽細胞のDNA合成を1-10ng/mlの濃度範囲で濃度依存的に促進した。また,ヒト歯根膜線維芽細胞のコラーゲン合成も同様に著明に促進した。一方,硬組織形成能の指標であるアルカリホスファターゼ活性も著明に上昇させた。このように,TGF-βは歯根膜という軟組織だけでなく,硬組織の形成に対しても促進的に作用することが示唆された。 ヒト歯根膜線維芽細胞のアルカリホスファターゼ活性をはじめとする骨芽細胞様の機能は,活性型ビタミンD3やTGF-βなどによって制御されること,また,ヒト歯根膜線維芽細胞は自ら,硬組織代謝に関連の深い活性型ビタミンD3に対するレセプターの発現を誘導する因子を産生・分泌していることを我々の研究グループは明らかにしている。我々は,ヒト歯根膜線維芽細胞がTGF-βを産生することをmRNAで確認しているので,活性型ビタミンD3レセプターを誘導する因子の一つがTGF-βではないかと考えた。そこで,TGF-βをヒト歯根膜線維芽細胞に作用させたが,活性型ビタミンD3レセプターmRNA発現を促進しなかった。 次年度は,TGF-βによってアルカリホスファターゼ活性以外の硬組織形成能がどのような調節を受けるのかを調べるとともに,ヒト歯根膜線維芽細胞自らのTGF-β産生制御に焦点をあて,TGF-β産生がどのようなサイトカインによって制御されているかを調べて,そのオートクライン機構を中心に研究を進めていく予定である。
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