研究概要 |
我々はc-fos遺伝子発現と歯周病病態形成との関係を明確にすることを目的として細胞レベルでの実験を行い、今までに(1).ヒト精製IL-1β(rhIL-1β)はヒト歯肉線維芽細胞(HGF)の細胞増殖、matrix metall oproteinase-1,3(MMP-1,3)、prostagandn E2(PGE2)の産生およびc-fos、MMP-1,3、COX-2mRNAの発現を促進すること、(2).抗fos抗体は恒常的なMMP-1,3とCOX-2のmRNA発現に影響を与えなかったが、rhIL-1βにより誘導されるこれらのmRNA発現を部分的に抑制すること、(3).rhIL-1βはHGFのAP-1活性化を促進し、AP-1のinhibitorであるcur cuminはrhIL-1βが誘導するMMP-1,3とCOX-2 mRNA発現を抑制することを明かにした。そこで今回我々は、さらに研究を進め以下に示す結果を得た。 1. 抗fos抗体がrhIL-1βで刺激したHGFのMMP-1,3、PGE2産生に及ぼす作用の検討:HGFを抗fos抗体で前処理後、rhIL-1β(2.5ng/ml)と抗fos抗体でさらに刺激し、MMP-1,3、およびPGE2の産生をEIA法にて確認した。抗fos抗体はrhIL-1βにより誘導されるこれらの産生を部分的に抑制した。 2. rhIL-1βで刺激したHGFにおけるAP-1の活性化とMMP-1,3、PGE2産生に及ぼす抗fos抗体の作用についての検討:HGFを抗fos抗体で前処理後、rhIL-1β(2.5ng/ml)と抗fos抗体でさらに刺激し、AP-1の活性化をgel mobility shiftassayにて、MMP-1,3、およびPGE2の産生をEIA法にて検討した。抗fos抗体はrhIL-1β依存的なAP-1の活性化および、これらのタンパク産生を部分的に抑制した。 これらの結果は、c-fosは歯肉線維芽細胞において、AP-1の活性化を介してIL-1β依存的なMMP-1,3、およびPGE2の産生に関与することを示しており、c-fosの歯周病病態形成への関与の可能性を示唆している。
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