プラークとインプラント周囲炎との関連性に関しては、あまり検索が進んでいない。したがって、インプラントに対し、プラーク細菌はあまり関与していないとする報告もある。一方、荷重に起因する骨喪失においてはインプラント周囲溝内のプラーク関与は少なく、インプラント周囲の軟組織に臨床的炎症兆候はみられない。このインプラント周囲の病変は力学的過剰荷重が原因である。過剰荷重と感染が同時に存在する場合にインプラント周囲の骨喪失が加速されるか否かは、現在の所不明である。そこで、本研究はまずインプラント周囲組織にプラーク細菌が及ぼす影響について検索する。この研究は3年間にわたるものであり、初年度である平成8年度は実験系の確立にある。実験方法としては、実験動物として体重16kg前後の雑種成犬4頭を用いた。下顎の両側第3・4前臼歯を抜歯し、インプラント埋入母地とした。実験に使用したインプラントはBranemark implant(以下BR)およびIntegral implant(以下IN)の2種類、対照として天然歯の第1後臼歯を用いた。抜歯3カ月後にBRおよびINの各インプラント計8本ずつ埋入した。下顎両側にそれぞれ2本を並行に埋入した。術直後、感染予防の目的で懸濁水性マイシン注NZ0.05ml/kgを筋肉内注射した。インプラント埋入後8週にヒーリングスクリューを除去し、アバットメントを装着した。その後は1wに1回軟毛の歯ブラシと0.12%クロルヘキシジンにてプラークコントロールを行い、1カ月後ブリッジタイプの上部構造を装着した。その後6カ月間プラークコントロールを中止した。その間、犬には、プラークを堆積させる目的で軟食を与えた。臨床的診査はPlaque Index(PLI)、Mobility(MO)はPeriotestを用いた。Probing depth(PD)は歯週ポケット自動計測器を用いた。Bleeding on probing(BOP)はプロービング時の出血の有無を記録した。
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