研究概要 |
腸管内に定着した細菌や食物に含まれる抗原に対して生体は免疫応答を起こさなくなる。この経口免疫寛容が歯周病の発症と進行にどのように関わるかを知るためには,まず歯周病細菌が口腔内定着する際,腸管内にも定着するかどうかを整理しなければならない。歯周病細菌の口腔内定着と腸管内定着との関わり,ならびに腸管内定着細菌に対する宿主免疫寛容の成立について調べるために、まず歯周組織への定着を再現できる動物実験モデルを確立する目的で以下の実験を行った。 1)Porphyromonas gingivalis 381株をコンベンショナル飼育C3H/HeNマウス第1臼歯歯肉溝に実験的に接種し,定着させうる実験系を確立した。 2)歯肉溝の嫌気性グラム陰性菌の密度は,接種前には検出限界以下であったが,接種後少なくとも11週まで接種菌は歯肉溝の優勢嫌気性菌として回収できた。 3)その菌密度は9週目で一旦低下する傾向を示したが,その後一定のレベルを維持した。 4)回収菌は接種菌と遺伝子レベルで同一であることを示唆する結果を得た(arbitrarily primerを用いたAP-PCR法による)。 5)マウス糞便中からも実験期間を通じて接種菌ゲノムDNAが回収されることを示唆する結果を得た。今後,P.gingivalis定着にともなう宿主のP.gingivalisに対する免疫応答の変化,ならびに定着した歯周組織および腸管での免疫応答の性状を調べる課題を持った。
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