研究概要 |
目的:歯周ポケットに定着した歯周病関連細菌が腸管内にも定着し,経口免疫寛容によって感染免疫を容易にするメカニズムを想定し,これを検証するための実験系を作成した。 材料・方法:歯周病関連細菌:P.gingivalis FDC381株:実験動物:C3H/HeNマウス:歯肉溝内細菌のサンプリング:滅菌爪楊枝で行い,滅菌生理食塩水で希釈した;細菌の培養:ヘミン・メナジオン添加血液寒天培地または血液寒天培地に播種し,嫌気条件下で行った;細菌の遺伝子型タイピング:970-11プライマーを用いたarbitrary primed-PCR法;細菌の口腔内接種法: 歯周病関連細菌を付着させた縫合用絹糸を被験マウス第一大臼歯歯頸部に結紮し,歯肉溝内に固定する。 結果・考察 1)P.gingivalisは,結紮後15週まで歯肉溝内から回収され,嫌気性細菌の細菌叢の中で優勢であった。このことからP.gingivalisのポケット内定着が示唆された。 2)第一大臼歯周囲の歯槽骨吸収が5週以後有意に観察された。このことから,被験マウスでの実験的歯周炎の発症が示唆された。 3)腸管内から摂取したP.gingivalisと同じ遺伝子型を有するP.gingivalisが回収された。このことから,歯周ポケット細菌叢から腸管細菌叢へのP.gingivalisの伝播が示唆された。 これらのことから,確立期の歯周炎を持つ個体では,P.gingivalisが腸管内に定着し,経口免疫寛容によって宿主防御機能が変質している可能性が示唆された。
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