研究概要 |
加齢や歯の喪失が顎骨に与える影響については骨形態計測学的な検討や骨塩量測定による評価がされているもののいまだ不明な点が多い。また、骨粗鬆症は老化および閉経とともに進行することも知られている。そこで、閉経後骨粗鬆症の実験的モデルある卵巣摘出ラットを用いて、老化や歯の喪失が顎骨の変化に及ぼす影響について検討した。 実験方法 13週令SDラットに卵巣摘出術(OVX)あるいは偽手術(SHAM)を行った。また、OVX、SHAM群その半数の上顎右側第一大臼歯を抜歯(ext)し、これらのラットをpair feeding法により飼育した。109日間飼育後ラットを屠殺し、下顎骨および大腿骨の骨塩量をDEXA法(DCS-600a;アロカ社)により測定した。 平成8年度の結果 屠殺時の体重はpair feedingの結果OVX,OVX ext,Sham,Sham ext群間で差は認められなかった。大腿骨BMDはOVX群で有意に減少していた。しかし、下顎骨全体のBMDはOVX、Sham群間で差はなかった。また切歯部のBMDにもOVX,Sham群間で差はなかった。一方、下顎頭部に限局してBMDを測定すると、OVX群はSham群に比較してBMDが有意に減少していた。一方、抜歯の影響を検討すると、Sham ext群の骨塩量はSham群に比較して減少傾向にあった。 考察および結論 下顎骨は大腿骨と比較して海綿骨量が少ないため、DEXA測定によりOVXによるBMDの差は認められなかったものと思われる。また切歯ならびに臼歯が存在するために、DEXA法による差が生じにくかったことも考えられる。しかし今回の結果から海綿骨が比較的多い下顎頭部に限局した部位におけるBMDは、エストロジェン欠乏下で有意に減少することが明らかになった。また、下顎の骨塩量が抜歯により減少傾向にあることから、抜歯も顎骨の塩骨量に影響を与える因子となりうることが示唆された。
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