骨芽細胞の基質に対する初期付着は、骨インプラント材の初期固定の確保のために非常に重要な問題である。本研究では、生体材料の表面で骨芽細胞を培養し、フォーカルコンタクトの形成をビンキュリン抗体染色した細胞の蛍光顕微鏡観察によって調べた。細胞の画像解析によって、細胞面積、形状因子などを定量的に測定した。このような方法によって、材料表面での骨芽細胞の初期挙動を定量的に把握し、インプラント表面での骨形成の差異を細胞-基質レベルの反応として解明することを目的としている。 前年度に引き続き、細胞培養に使用する直径10mm、厚さ2mmの試料を作製した。材料はハイドロキシアパタイト、α-TCP、β-TCP焼結体、チタン合金(Ti-6Al-4V)、アパタイトコーティングチタン板、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、β-TCP-CPLA複合体を使用した。試料の表面粗さは約1〜5μmとした。これらの試料の表面で骨芽様株細胞UMR106、MC3T3-E1、ROS17/2.8を培養した。これらの細胞を培養24時間後に固定し、モノクローナル抗ビンキュリンによる蛍光抗体染色を行った。落射蛍光顕微鏡でビンキュリンの局在を調べ、各材料表面における細胞のフォーカルコンタクトの形成を調べた。フォーカルコンタクトは細胞の基質に対する強い接着を示している。 アパタイトコーティングチタン板は表面が粗いため、β-TCP-CPLA複合体は自己蛍光が強いため観察に適さなかった。細胞はハイドロキシアパタイト、α-TCP、β-TCP焼結体、チタン合金の上でよく広がり、フォーカルコンタクトを形成していた。一方、UHMWPEの表面では細胞は丸く、フォーカルコンタクトの形成は少なかった。画像解析の結果、細胞面積はアパタイトが最も大きく、UHMWPEが最も小さかった。
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