研究概要 |
本研究は顎関節症に対する直線偏光型近赤外線照射治療の効力を二重盲検法のもとで評価するとともに,その照射効果と組織血流量ならびに皮膚温の変化とを比較し,作用機序を推定し適応症を明らかにすることを目的としている。 本年度の研究計画の要点は,(1)コンピュータ制御の自動乱数発生装置を直線偏光型近赤外線照射装置に連動させ,照射・偽照射が無作為に選択されるようにして二重盲検法の管理下に置くことと,(2)臨床所見に照射部位の血流量と皮膚温変化の計測結果を対比させ,照射効果の作用機序を検討することである。 (1)については,偽照射での出力量を検討した結果,赤色光が照射プローブ先端から可視できる程度は最大出力の約20%で,この出力量で照射部位には僅かに温熱感が生じた。近赤外線照射器,SUPER LIZER HA-550の発光装置自体のデジタル回路を変えることは不可能であったため,出力量調節可変抵抗を照射・偽照射でそれぞれ固定抵抗の切り替えとした。しかし,これによって出力量の再現性が向上した。そこで,研究の実施では,乱数表に従った照射・偽照射の切り替えを新たに加わった本学歯学研究科の大学院生が担当して,二重盲検を保った。 (2)については,照射群における質問表の項目,臨床所見からの疼痛軽減,咀嚼機能回復,顎運動機能改善などに関する照射効果は,すでに報告した結果とほぼ同じであった。一方,血流量は測定値に個体差に起因すると思われるばらつきが認められること,皮膚温は測定する室温の影響を受け易いことが、今後の問題点として明らかとなった。
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