研究概要 |
本研究は顎関節症に対する直線偏光型近赤外線照射治療の効力を二重盲検法のもとで評価するとともに,その照射効果と組織血流量ならびに皮膚温の変化とを比較し,作用機序を推定し適応症を明らかにすることを目的としている.照射・偽照射を二重盲検法の管理下に置くことに関しては,近赤外線照射器,SUPER LIZER HA-550の発光装置自体のデジタル回路を変えることは不可能であったため,出力量調節可変抵抗を照射・偽照射でそれぞれ固定抵抗の切り替えとした.乱数表に従った照射・偽照射の切り替えを新たに加わった本学歯学研究家の大学院生が担当して,二重盲検を保って実施した. その結果,血流量は測定値に個体差に起因すると思われるばらつきがん認められたので,顎関節症症例のみならず,さらに正常者における照射前後のデータを追加する必要があることが明らかとなった.また,患者をI型,II型およびIII型,IV型の3層に割り付け,それぞれの病態に対する照射効果から適応症を明らかにすることも目的の一つであったが,本院での新患は10歳代,20歳代が圧倒的に多く(野村修一ほか.本院における顎関節症チーム診療にみられる登録患者の概要.新潟歯学会誌.26(2):223-226,1996),IV型は少なかったため症型別患者数の偏りによる影響を少なくするため,さらにデータを追加することが必要と思われた. さらに,関連した研究として,高齢顎関節症患者における治療成績の調査(三浦香,野村修一ほか.老年歯科医学,12(1):26-31,1997)や,嚥下時に顎関節部の疼痛を訴えた症例(野村修一ほか.日顎誌,9(1):292,1997)への応用からも照射の効果を観察した.
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