研究概要 |
金属系直接修復材料はレジン系修復材料と較べ機械的性質は優れているが歯質との接着性は全くなく、その事に由来する窩洞形成時の健全歯質の削除、二次齲蝕の発生のしやすさなどの欠点が指摘されている。 研究代表者はこの欠点を補うために以下の2つの方法を提案している。 1つは平成8年度に実施したコラーゲン溶解剤処理法と銀鏡反応を利用して歯面上に効果的に金属銀を析出させ、液体金属(水銀、ガリウム)との合金化によって合着材を用いることなしに金属系直接修復材料を歯質に強固に接着させる方法であり、接着性、辺縁封鎖性に関しても従来のレジンセメントを用いる場合に較べて極めて優れていたが、処理時間がトータルで10分程度必要であり、実用化にはその短縮が課題として残った。 もう1つはレジンセメントを用いて歯科用銀アマルガムを歯質に接着させる試み(アマルガムボンディング法)に、研究代表者が提案している酸処理と次亜塩素酸ナトリウム処理を併用する歯面処理法を適用し、より強固な接着性を付与する試みであり、今年度に実施した。 今年度得られた接着性に関する知見 : 接着強さ : 従来のアマルガムボンディング法では、エナメル質では13.4MPaと良好な接着強さを示すが,象牙質に対しては1.4MPaと極めて弱い接着性しか示さなかった。そこで、酸処理と次亜塩素酸ナトリウム処理を併用する歯面処理法を適用することにより象牙質被着面をエナメル質と同様にハイドロキシアパタイトリッチにした結果、象牙質に対して、銀アマルガムで約10MPa、ガリウム合金で約30MPaと対エナメル質と同様に強固な剪断接着強さを発現させることが出来た。 接着機構 : 金属系直接修復材料とレジンセメントとの接着強さは主として嵌合力によって発現された。また、銀アマルガムに較べてガリウム合金が有意に大きな接着強さを発現した理由は、ガリウム合金の硬化膨張がレジンセメントの重合収縮を補った結果、接着界面での内部応力の緩和が起こった為と考えられた。
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