研究概要 |
1.ヒト咬筋組織収縮後充血に対するCold Pressor Test (CPT)の影響 咀嚼筋痛を慢性化させる原因として注目を集めている筋組織内血流量の低下が,交感神経系の緊張により生じているかどうかを明らかとするため、Victor(1987)らにより実験的に骨格筋内の交感神経活動を増大させることが可能と報告されているCPTを健常男性10明に加え,50%MVCによる30秒間の噛みしめを行わせた後に生じる収縮後充血量を,噛みしめと同時に15°CのCPTを加えるCPTトライアルと加えないコントロールトライアルの2群でNear Infra-red Spectroscopy法により比較した。本実験の結果,15°CのCTPは収縮後充血時のヘモグロビン濃度を有意に抑制するという現象が観察された。 2.安静時ヒト咬筋組織内血流動態に対するCold Pressor Test (CPT)の影響 慢性咀嚼筋痛は機能的負荷とは無関係に発症するため,安静時におけるヒトの咬筋筋組織内血流動態に対するCTPの影響を評価した.4,10,15°Cに温度設定されたCPTを安静時に前腕に1分間与え,CPTを加える前および加えた後のデータと比較した。その結果,安静時の咬筋筋組織内血流は設定温度が低いほど増大することが明らかとなった. 2.ラット咬筋組織内血流の顕微鏡的観察 Wister系ラット5週齢をネンブタールを用いて腹腔内麻酔をした後,咬筋部を露出し,生体顕微鏡を用いて電気刺激により筋収縮を生じさせる際の収縮前,収縮中および収縮後に血管径に変化が見られるかを検討するための予備実験を行った。その結果,咬筋筋膜内を走向する血管径の顕微鏡観察は,可能であると思われた。また,咬筋組織内血管は,現在までに顕微鏡観察が可能と報告されている他の骨格筋と同様に,筋線維に平行して走向していることが明らかとなった。
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