研究概要 |
圧電フィルムの微小電気刺激は,骨欠損部ならびにインプラント周囲骨の治癒を促進し,骨の早期成熟に有効であることを明らかにしてきた.しかし,臨床応用を考えると,圧電フィルムは吸収性であることが望ましい.そこで,生体内吸収性で,ずり応力によって微小電流を発生するポリ-L-乳酸フィルム(PLLA)に着目し,歯科インプラントのGBR法への応用を試みた.本研究では,PLLA filmの吸収に伴う電気物理的変化,ならびに物理化学的変化が周囲組織に及ぼす影響を明かにすることを目的として,ラット大腿骨骨欠損部をGore-Tex^<【.encircled?.】R【.encircled?.】C>を用いた場合とPLLAフィルムで被覆したときの骨再生過程を比較検討し,さらに経時的なフィルムの圧電性の変化,周囲軟組織に及ぼす影響について病理組織学的に検討し,以下の結果を得た. 1. Gore-Tex^<【.encircled?.】R【.encircled?.】>では骨再生が促進しなかったのに対し,PLLA filmではずり応力が加わったことで微小電流を発生し,骨欠損部の骨再生を量的に,質的に,かつ時間的に促進した.また分子量30万の群では10万の群より骨再生効果が著明であった. 2. filmは吸収に伴い経時的に発生電位が減弱するものの,骨再生が早期に行われたため組織修復の促進には影響がみられなかった. 3. 本フィルムは,観察期間内において表層の加水分解を認めたが,薄い線維性結合組織で被包されて残存しており,周囲に炎症反応や異物反応は認めなかった. 以上から,PLLA filmは組織再生に必要な期間においては,圧電体としての機能と膜として機能を保ち,GTR法を促進する膜として有効であるとともに,生体材料として十分な組織親和性を具備していることが示された.今後,実際の臨床例への応用に向けて材質,操作性の改善を行ってゆく予定である.
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