色を数値化した客観的色合わせ法であるコンピューターカラーマッチング(以下CCM)を用いる、当講座で開発した陶材焼付鋳造冠の色調構築システムを臨床応用に適した体系へと向上させるために、条件の異なる3ケ所の歯科医療機関を対象として、フィールドテストによる多面的な臨床評価を行った。マルチスペクトルカメラシステムMSCl20およびCCMシステムを搬入し、医療機関を訪れた患者を対象としてCCMによる上顎中切歯の陶材焼付鋳造冠を作製し、システム全般ならびにCCMによる色調構築精度について分析した。 本システム全般に対する臨床評価としては、(1)測色部、照明装置、コンピューター部からなるシステムハード面の小型化、(2)高齢者を対象とした場合を考慮した測色時間の短縮、(3)測色データ分析能率向上を目的とするカラー画像表示機能の追加、(4)測色から処方計算過程を直結したシステムへの改良、(5)微量陶材の計量に対する自動計量装置の開発など、システム全体のスリム化とより一層の自動化が必要と判断された。CCMによる色調構築精度は歯頚部および中央部に比較して切縁部において劣った。特に透明感が少なく着色性が高い切縁部ではCCM計算が収束しにくく予測色差も悪かった。現行のCCMにおけるエナメル陶材3種類(着色成分、透明成分、隠蔽成分)のみでは色調構築範囲に限界があると判断され、精度良く色調構築の可能な切縁部の色空間を拡大するために、エナメル陶材の種類および切縁部のCCMプログラムを再検討する必要性が示唆された。 歯科における審美性を考えるとき、クラウンの色調は欠かすことのできない重要なテーマである。歯列と調和した自然感のある歯冠色を常に安定した精度で構築するために、本研究結果を基にCCM情報ネットワーク化を推進し、次世代の歯科医療を支えるシステムを樹立したいと考える。
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