歯科用合金の腐食による損傷の推定を目的として、腐食状況を系統的に測定できるシステムの設計を試みた。測定手法としては、電気化学測定法を選択した。さらにその内のクーロスタット法を、実際の測定手法として選択した。この測定法を腐食モニタリングシステムとして用いるためには、フルコンピュータ制御による装置が必要であるため、SEIKO EG&G(プリンストンアプライド・リサーチ)のポテンショガルバノスタットModel283を購入して現有のIBMパーソナルコンピュータに接続し、SEIKO EG&G(プリンストンアプライド・リサーチ)の既製ソフトウェアにて制御を行なえる測定装置の設計を行なった。 しかし、既製ソフトウェアにては、クーロスタット法の測定制御が十分でなかったため、ソフトウェアの改良を行なった。しかし、その改良は製作上の問題で困難を極めたため、メーカー(SEIKO EG&G)にソフトウェア改良を依頼した。現段階では、メーカー側からの改良に関する解答を得ていない。そこで、他の測定手法の応用を検討した。 クーロスタット法に変わる、腐食モニタリングシステムへの応用ができる電気化学的測定法として、ポテンショスタティック法を選択した。実際に、各種歯科用合金を用いてポテンショスタティック法にて測定を行なってみたところ、実験結果の表1に示したように、人工唾液中でのイオウイオンとの腐食反応の感度に順位付けをすることができた。この結果から、ポテンショスタティック法が腐食モニタリングシステムとして、応用可能であると考えられる。さらに、この方法の使用が十分であるかを検討するためには、得られた測定結果の校正と確認が必要である。 また、ポテンショスタティック法も測定操作は簡便であるが、クーロスタット法に比べ測定時間が長いという欠点を持つ。そこでクーロスタット法測定のためのソフトウエア改良が行なえたならば、当初の目的どおり、その腐食モニタリングシステムへの応用を試みたい。
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