われわれは、酸化ストレスタンパクの組織傷害における応答を利用することにより、再建術後の皮弁の傷害度を指標となるマーカーとしての応用の可能性を考えた。それらの評価すべく、A170、MSP23、hemc oxygenase 1(HO-1)についてて次のような実験を行った。A170ついては(1)A170タンパク質をコードするcDNA全長の決定(2)A170タンパク質組み換え体と抗体の製作(3)A170タンパク質およびmRNAレベルのストレス応答の解析(4)細胞内A170の局在の確認(5)A170をリン酸化するキナーゼの検出・同定(6)A170が転写後の調節をうけていること可能性(7)ラットによる虚血モデルをつかい脳虚血によるA170の誘導を調べた。さらには(11)タンパクの制御が特定の転写因子Nrf2によることをNrf2ノックアウトマウスの実験で確認した。 基礎的実験でえられたこれらのA170の知見および、MSP23、HO-1の従来の蓄積した知見をもとに、それらの抗体を用いて臨床への応用を検討し、(1)酸化ストレスタンパクと手術標本での発現をしらべ、MSP23およびHO-1は健常組織で一部発現が確認された。さらに(2)腫瘍組織との関係も調べHO-1、MSP23については癌組織における発現の程度が異なることが観察され、酸化ストレスタンパクと臨床症状と関わり合いについての知見を得た。以上の研究で、組織の傷害に対する酸化ストレスタンパク質の応答がわかり、また、バラフィン切片内でも検知する事が可能であることがわかった。これらにより酸化ストレスタンパクを再建術後の皮弁の成否を判定するマーカーとして利用することの可能性を本研究で評価することができた。今後、より臨床の病態と結びつけられるように研究を進めていきたい。
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