研究概要 |
9年度は、in vitroにおける癌細胞の培養液中に放出される基質分解酵素、特にマトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)の産生状態について、電気泳動法を利用し検討した。また、in vivo浸潤モデル(正所性移植モデル)において得られた腫瘍を in vitro 中で24時間培養し、その培養液中に放出される酵素についての検討も併せて行った。その結果、ゼラチンザイモグラフィーでは、in vitroにおける癌細胞の培養液中にはMMP-2、9が観察された。また,MMP-2はいずれの癌細胞株にも産生がみられたが、MMP-9では高度浸潤癌の浸潤様式4C型の細胞においてのみ観察された。さらに、正所性移植モデルにおいて得られた腫瘍においても同様にMMP-2、9が観察され、高頻度にリンパ節転移を認めるOSC-19細胞とTT細胞では強いMMP-9の産生がみられた。また、これらの腫瘍の免疫組織染色の結果においても腫瘍組織や間質組織におけるMMP-2、9の局在を認め、ゼラチンザイモグラフィーにおける所見と一致した。従って、これらの結果から、口腔癌の基質破壊においてはMMP-2やMMP-9の産生が重要であること。また、高浸潤・高転移性の腫瘍でMMP-9の産生がみられることから、浸潤や転移にはMMP-9が重要な役割を担っていることが考えられた。今後は、これらの酵素の組織中での局在や、実際の組織中で基質破壊を行っているか否かを検討し、癌細胞の浸潤・転移の機序を詳細に解明してゆく予定である。
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