研究概要 |
1.造腫瘍や浸潤・転移あるいは抑制に関与する遺伝子の単離を行うことを目的に、岡山大学病態遺伝学の清水憲二教授より,プライマーを譲与して戴き,我々が樹立した,同所性移植法にて造腫瘍能や浸潤・転移能に相違があるヒト口腔扁平上皮癌細胞株に,Inter-Alu long PCR法によるGenomic Figer Print法(ヒトゲノムDNA中に存在するAlu配列を利用したPCR法)を行っている。各クローンに特異的に発現したバンドを数本認めたので,その遺伝子のシーケンスを行っている。今後の予定はこの遺伝子のクローニング,クロモゾーム上でのmappingを行い,遺伝子の発現と臨床病態との関係を検討する。 2.同所性移植法にて高転移性を示したクローンはサイトケラチン(CK_s)13,14,16を発現していなかったが,低転移性クローンは発現していた。CKと転移抑制能との関係を検討するために、RT-PCR法を用い,CK13のc-DNAを作製した。このc-DNAをCK13を発現していない高転移性クローンに遺伝子導入し,トランスフェクタントのクローニングを行っている。今後の予定は,同所性移植法にて浸潤・転移能を検討する。CK14,16に対して同様の実験を行う。また,CK19は造腫瘍性クローン(高転移性,低転移性を含む)にて発現していたが,造腫瘍性のないクローンには発現していなかったので,CK19と造腫瘍能との関係を検討するために,同様の実験を行う。 3.FACS法にて,高転移性クローンはインテグリンVLA-2とVLA-3の発現が高かったが,低転移性クローンは低かった。インテグリンと浸潤・転移能との関係の検討のために,東京大学薬学部の辻勉先生よりVLA-3のc-DNAを譲与して戴き,発現が低い低転移性クローンに遺伝子導入し,トランスフェクタントを作製し,クローニングが終わった所である。同所性移植法にて浸潤・転移能を検討する。VLA-2に対しても同様の実験を行う予定である。
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