研究概要 |
口腔扁平上皮癌患者の治療前における頸部リンパ節転移の診断精度の向上を目的にCT,USの各画像所見ならびに悪性度評価の頸部リンパ節転移に関する関連性をretrospectiveに検索し、口腔扁平上皮癌頸部リンパ節転移の複合診断法の確立を試みた。対象は治療前に触診ならびにCT,US画像撮影を行い、頸部郭清術による摘出リンパ節との比較同定が可能であったCT画像上の117リンパ節、US画像上の56リンパ節である。CT画像上に描出されたリンパ節の転移診断基準を短径10mm以上、内部heterogenityなCT像のまたはrim enhancement(+)とすると、正診率は81.2%であった。また、US画像上に描出されたリンパ節の転移診断基準を短径10mm以上、内部均一な低エコーないし不均一なエコー像とすると、正診率は87.5%であった。因みに、触診による正診率は70.8%であった。CT画像の転移診断基準と悪性度評価との関係では、悪性度評点12点以上と11点以下の間に有意差が認められた(p<0.0001)。すなわち、短径10mm以上、内部heterogenityなCT像の所見を呈するリンパ節を有し、かつ悪性度評点が12点以上の症例は11点以下の症例と比較すると明らかに転移頻度が高い結果であった。この相関関係はUS画像でも認められた(p<0.0001)。以上の結果を基に、CT,US画像で得られた所見の転移診断基準を上述のように設定し、さらに、臨床病理学的悪性度評点12点以上とする診断基準を加味すると、sennsitivityは90.3%、specificityは100.0%、正診率は93.9%と向上することが明らかとなった。以上のことから、口腔扁平上皮癌の頸部リンパ節転移の診断において、触診、画像診断と臨床病理学的悪性度の組み合わせによる診断精度の向上と早期診断の可能性が示唆された。
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