口腔扁上皮癌の生検組織におけるE-カドヘリン、α-カテニンの発現様式と頸部リンパ節転移との関連性について免疫組織学的に検討を行った。対象50例のうち、口腔扁平上皮癌組織の発育先進部におけるE-カドヘリン非減弱型は14例、減弱型は36例であったのに対し、α-カテニン非減弱型26例、減弱型24例とほぼ半々の発現様式を示した。また、50例中19例がpN+であった。pN±とE-カドヘリン、α-カテニン発現様式との関係をみると、pN+例は発育先進部においてE-カドヘリン非減弱型はわずか1例のみであり、他の18例(94.7%)は減弱型であった。以上の所見より発育先進部の癌細胞がE-カドヘリンの減弱を示す症例は頚部リンパ節転移を来す症例の多いことが明らかとなった(p=0.0051)。この関係は、臨床的に頸部リンパ節転移を認めなかったN0症例31例を対象とした検討でも認められた(p=0.0169)。一方、α-カテニン非減弱型はpN+19例中9例であり、推計学的有意差を示さなかった。E-カドヘリン、α-カテニンの非減弱型、減弱型の組み合わせを行うと、E-カドヘリン非減弱型/α-カテニン非減弱型は10例、E-カドヘリン非減弱型/α-カテニン減弱型は2例、E-カドヘリン減弱型/α-カテニン非減弱型は9例、E-カドヘリン減弱型/α-カテニン減弱型は10例であった。E-カドヘリン、α-カテニンのいずれもが非減弱型を呈した症例といずれかあるいはいずれもが減弱型を呈した症例に分け、pN±との関係を検討した結果、ともに非減弱型の症例にはpN+症例が認められなかった(p=0.0056)。さらに、N0症例について同様の検討を行ったところ、推計学的に有意の関係が示された(p=0.038)。以上の結果より、原発癌組織の発育先進部におけるE-カドヘリン、α-カテニン発現様式の検索は頸部リンパ節転移の有無を予測する上で有用であることが示唆された。
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