研究概要 |
白板症、口腔癌からの生検あるいは切除材料を用い、G1期サイクリンおよびサイクリン依存性キナーゼ(CDK)、P21/Waf1の発現を検討するとともに、P53遺伝子欠失マウスの口腔粘膜上皮角質細胞の増殖能、細胞周期について検討し以下の結果を得た。 1サイクリンD1,EおよびCDK2,4は、正常口腔粘膜上皮には弱く発現していたが、白板症では上皮異形成が高度になるにつれ発現が強くなり、それぞれの陽性率は上皮異形成が中等度以上で正常粘膜上皮と比較して有意に高かった。口腔癌組織では中等度以上の上皮異形成を示す白板症と比較すると、それぞれの発現は減弱していた。 2P21/Waf1は、正常口腔粘膜上皮および癌組織には発現がみられず、高度上皮異形成示す白板症でその発現が認められた。ただし、そのmRNAはいずれの組織にも発現していた。 3TUNEL法での陽性細胞は、正常口腔粘膜上皮で最も多く認められ、白板症で上皮異形成が高度になるにつれ、少くなる傾向がみられた。癌組織では更に陽性細胞の数が減少していた。 4P53遺伝子欠失マウスの口腔粘膜上皮角質細胞の増殖能は、正常マウスのそれと比較して亢進していた。また、正常マウス口腔粘膜上皮角質細胞は培養1週間目頃より増殖しなくなるのに対し、P53遺伝子欠失マウスの上皮角質細胞は培養後2週間を経過しても増殖する事が明らかになった。Flow cytometerで細胞周期を検索したところ、p53遺伝子欠失マウスではG1期の短縮が認められた。 以上の結果から、癌化の過程においてG1期チェックポイントの制御機構からの逸脱が起こり、それに伴ってアポトーシスの抑制が生じていることが示唆された。
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