研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)患者の関節液中には、種々の炎症性サイトカインや蛋白分解酵素(MMP)活性が検出され、関節内の病態把握に利用されている。われわれは、クローズドロックを主症状とする顎内障患者の中に、滑液中の炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,IL-8)や蛋白分解酵素活性の亢進が認められることを報告し、関節病態マーカーとしての有用性を検討してきた。本研究では、ロック患者滑液中の炎症性サイトカインの消長と炎症の過程で活性化される蛋白分解酵素の特定を行い、これらが軟骨破壊の病態といかに関連するのか検討した。対象は、クローズドロック患者22症例(25関節)であり、対照群は12症例(15関節)である。滑液はパンピングマニピュレーション施行時に上関節腔から採取し、蛋白濃度を一定に調整後、ELISA法やSDS電気泳動を応用したエンザイモングラム、ウエスタンブロット法を用い、サイトカイン濃度およびMMP活性を測定した。その結果、IL-1、IL-6濃度がともに高値を示し、関節構成体の骨性変化を示す症例では、滑液中に72KDa,66KDaのゼラチンを分解する蛋白分解酵素活性認められ、特異的抗体を用いた解析からこれがMMP-2とMMP-9であることが確認された。また、ロック患者滑液中にはMMP-3活性を含んでいる症例も認められた。以上の結果から、軟骨破壊に特定の基質特異性をもったMMPが関与していること、その出現に炎症性サイトカインが関与している可能性が示された。
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