研究概要 |
前年度までの研究で、まずロック患者滑液中の炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,IL-8)値は、正常関節滑液よりも高い値を示し、IL-1とIL-6の両者が高値を示す症例には画像所見上、下顎頭の骨変化を認めることを見い出した。また、軟骨基質の分解酵素であるMMP2(ゼラチナーゼ)やMMP3(ストロメライシン)活性が亢進しているという予備的データを得た。 本研究では、炎症の過程で出現する滑液中のプロテアーゼをゼラチンを基質とするエンザイモグラムとウエスタンブロット法により検索した。その結果、IDおよび正常対照群ともに分子量92KDaと72KDaのプロテアーゼ活性が検出された。これらの活性は中性領域(pH8)に至適pHを持ち、EDTAでその活性が抑制されることからMMPと考えられた。さらに、変形性顎関節症(OA)症例の中には分子量66KDaのプロテアーゼ活性が認められた。72KDa、66KDaのバンドは抗MMP-2抗体と反応することから、MMP-2そのものであり、72KDaは不活性型のproMMP-2、66KDaはその活性型と考えられた。また、抗MMP-3抗体を用いたウエスタンブロットの結果、エンザイモグラムでは明瞭なバンドとして検出できなかった分子量48KDaの活性型MMP-3も検出することができた。滑液中に活性型のMMP-2、MMP-3が存在することは、MMP/TIMPの量比がこわれ、軟骨基質であるタイプIVコラーゲン、プロテオグリカンの分解が起こっていることを意味しており、軟骨破壊の病態の始まりを示す有力な生化学的マーカーとなり得ると考えられた。
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